【多発中】若者もターゲットに!虚偽の投資話の詐欺
昨今、様々な詐欺事件が増えていますが、具体的にどのような詐欺があり、その対処法、そして実際に警察がどこまで対応してくれるのか等について、今回解説いたします。
1.現在、多発している詐欺
まず、現在多発している詐欺としては、以下の3つが代表的なものです。
②直接自宅に銀行員を装ってやって来て、キャッシュカードが不正利用されていて使えなくなるので交換する必要がある等と言って、キャッシュカードを受領するとともに暗証番号を聞いてATMでお金を引き出す詐欺
③虚偽の投資話を行って元本保証で倍にして返す等といってお金を騙し取る詐欺
このうち、①②の詐欺は判断能力が低下した高齢者をメインターゲットとして行われます。
③の詐欺は若い人もターゲットとされるケースが最近増えてきています。
今回は、この③の詐欺に主眼を置いて解説します。
2.虚偽の投資話の詐欺
元本保証で倍にして返す等の投資話でお金を騙し取る詐欺は、なかなか警察が動かないケースが多いです。
なぜなら、詐欺罪で立件するためには、お金を受領した時点で返す意思がないことを立証をしなければなりません。
そのために、まずは投資内容が虚偽であることを立証する必要があります。
その上、「受領したお金をすぐに他の借入に返済する」等、明らかに返す意思がある、矛盾する言動がない本人の弁解がある場合、その弁解次第では詐欺罪での立証がかなり難しくなります。
そうすると警察もなかなか動いてくれないのが実情です。
実際に、詐欺罪ではなく出資法違反での逮捕・起訴となるケースが多いです。
そのため、決定的な証拠がない限り、弁護士なしでは警察が動くことは殆どありません。
また、弁護士に依頼したとしても、弁護士の指示のもとある程度の証拠収集を自分達で行わなければなりません。
弁護士からは、警察に対して事件化して捜査を進めるように強く求めるとともに、弁護士と警察が連携して不足証拠を収集していき、逮捕・起訴まで持って行く必要があります。
なお、刑事事件化する過程で詐欺者から示談を持ち掛けられ、お金の返還を受けられるケースもあります。
警察に相談する際に、詐欺者本人を処罰して欲しいという思いよりもお金を返還して欲しいという思いが強いと、警察よりまずは民事事件で進めるように強く促されるケースが多くありますので、その点はご留意いただければと思います。
弁護士としてご相談を受ける際、A『投資したけども騙された』という上記のような詐欺のケース、B『お金を貸したけども帰ってこないので詐欺で訴えたい』というケースが多いです。
Aでも立証が難しい状況ですので、Bであればなおさら詐欺で訴えることは極めて難しいということになります。
少しでも返済がされていた場合は、返済する意思がなかったという立証に重大な支障をきたすため、Bは詐欺での立件はほぼ不可能です。Aの場合でも立件は、かなり難しい状況となります。
そのため、出資をする際の防衛策としては、以下のことが重要となります。
・返済口座を敢えて契約書に記載せずに、出資者の指定する口座に支払うという内容に留めておく
・先方とのやりとりをLINE等で残すか口頭でも録音しておく
もう既に出資してしまっている場合は、証拠がすべてですので、以下のような対策が必要となります。
・事後的でも未だ騙されている振りをして、電話を掛けてその会話内容を録音して証拠化する
3.まとめ
以上のとおり、昨今様々な詐欺事件が多発している中、特に投資詐欺の場合の対処法等について解説させていただきました。
投資詐欺を立件化するためにはかなりハードルが高く、弁護士と警察が連携して立件のために動く必要性が高いケースが多いため、投資詐欺に詳しい弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。
投資詐欺等でお困りの方は、弁護士法人菰田総合法律事務所までご相談ください。

KOMODA LAW OFFICE 弁護士
川畑 貴史 TAKASHI KAWABATA
得意分野は刑事、企業法務問題、相続。
座右の銘は『急がば回れ』
強制捜査とは|弁護士コラム
今回は、刑事訴訟法にいう強制捜査について、それがいかなる捜査であるのかをご紹介したいと思います。
1 観点
刑事訴訟法(以下「刑訴法」といいます。)197条1項但書は「強制の処分は、この法律に特別の定めがある場合でなければ、これをすることができない。」旨を定めていますが、強制の処分(強制捜査)というのはどのようなものを指すのでしょうか。
強制捜査に当たるかについては、有形力の行使という観点と、個人の人権を侵害する行為という2つの観点から考えられています。
また、特に有形力の行使について、任意捜査においては有形力の行使は一切許されないとする考え方がありますが、裁判例は、任意捜査においても一定の有形力の行使を認めています。
最高裁は、任意捜査でも一切の有形力の行使が許されないわけではないとして、その限界を「個人の意思を制圧する」というところにおいています。そのため、相当程度強力なものでなければ、強制処分とはなりません。
2 強制捜査の意義
強制捜査にあたるか否かの基準として、裁判例が採用している基準は次の通りです。
「捜査において強制手段を用いることは、法律の根拠規定がある場合に限り許容されるものである。しかしながら、ここにいう強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものであつて、右の程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合があるといわなければならない。ただ、強制手段にあたらない有形力の行使であつても、何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相当でなく、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと解すべきである。」
上記のように、強制捜査とは個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段をいうものとされています。
なお、有形力の行使については、必要性、緊急性などを考慮して、具体的な事情のもとで、相当であると認められる限度において強制捜査は許容されるものとされています。
3 まとめ
強制捜査についてご説明いたしました。強制捜査は個人に対し非常に強い制約を課すものですから、法定の手続が要求されています。任意捜査の原則がとられていることから、まず任意捜査が行われるというような場合であっても、有形力が伴うことが想定されます。
しかしながら、任意捜査であるから有形力がすべて排除されるわけではなく、具体的状況下において相当とされる有形力の行使が許容されています。
もっとも、その可否は個別の事案により検討する必要があり、場合によって相当ではないと考えられることもありますので、そのような捜査を受けた場合は、専門家に相談するのがよいかもしれません。
「家族が逮捕されたが、どうしたらいいか」「示談で済ませたい、処罰を軽くしたい」といった刑事事件に関するご相談を受け付けております。より良い解決方法を目指してサポートいたします。
ご相談のご予約は、KOMODA LAW OFFICE (菰田総合法律事務所)0120-755-687までお問い合わせください。
任意捜査の原則|弁護士コラム
今回は、刑事訴訟法に規定されている任意捜査の原則について、ご紹介したいと思います。
1 強制処分法定主義
刑事訴訟法(以下「刑訴法」といいます。)197条1項但書は「強制の処分は、この法律に特別の定めがある場合でなければ、これをすることができない。」旨を定めています。これが強制処分法定主義と呼ばれるものです。一方で、同条本文は「捜査については、その目的を達するために必要な取調をすることができる。」と規定しています。
2 任意捜査の原則
強制処分に関する刑訴法197条1項但書と対比し、同項本文の規定(「捜査については、その目的を達するために必要な取調べをすることが出来る。」)は任意捜査の原則を指すものだというのが一般的な理解です(警察官に対する捜査規則である犯罪捜査規範99条は「捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない。」と、この原則を明示しています。)。
しかし、任意捜査の原則というのは、常に任意捜査が強制捜査に優先する、すなわち、任意捜査で行える場合には、強制捜査を行ってはならないということを意味するものとされているのではありません。
例えば、逮捕・勾留という人身の拘束については、逮捕・勾留しなくても捜査の目的を達することができる場合に逮捕・勾留を認めてはならないのは当然でしょう。
しかしながら、任意捜査ができる場合には強制捜査を行うことが許されないとすると、強制捜査を行う前に相手に逐一捜査を承諾するかどうか確かめなければいけないことになり、これは、不合理です。
また、任意捜査が可能な場合であっても強制捜査によるべき場合もあります。犯罪捜査規範は、住居については、たとえ住居主の承諾があっても任意捜査として捜査を行ってはならない、つまり住居については、必ず強制捜査を行わなければならないと定めています(犯罪捜査規範108条)。
これは、それだけでは、任意捜査の原則に反しているように思えるのですが、この規定は、警察官が相手方にむりやり承諾させて捜査をすることがないように任意捜査を許さないことにしたものです。
3 まとめ
任意捜査と一口に言っても、相手はいかに上手く捜査を行うかということを考えている捜査機関ですので、捜査機関のやり方によっては、完全に任意に応じているとまではいかない場合も考えられます。
そのような場合に協力しない選択も可能であるということを意識することは、ひとつ意義深いものといえるでしょう。
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刑事訴訟法上の「当事者」に関する概念|弁護士コラム
今回は、刑事訴訟法上の「当事者」に関する概念についてご説明します。
当事者主義について
刑事訴訟でも民事訴訟と同様に当事者主義がとられますが、制度上異なる部分が存在します。
刑事訴訟法(以下、「同法」といいます。)にいう当事者主義とは、主に、審判対象の特定、すなわち訴因特定(犯罪構成要件に該当する具体的事実に関する検察官の主張)及び証拠調べをめぐる訴訟追行過程において、当事者たる検察官・被告人が主導的役割を担う訴訟構造をいいます。
訴訟追行について、裁判官が積極的に主導的な役割を担う場合、自ら証拠を収集し真実を追究する者が同時に判断者を兼ねることとなり、判断が偏るおそれがあります。
このような経緯から、当事者主義を採用するのが合理的であると考えられているのです。
刑事訴訟において当事者主義がとられているということは極めて重要です。制度上は検察官(国民の代表者)と被告人は対等とされているのです。
もっとも、刑事訴訟における一方の当事者は、捜査権限を有する国家機関たる検察官であって、もう一方の当事者は、私人たる被告人・弁護人に過ぎません。
したがって、単純に当事者主義を貫いた場合、同法の目的である、真実の発見ないし実体的な正義の実現に困難をきたすことが、容易に予測されます。
また、刑事裁判において追求されるべき「真実」は、民事裁判における言わば当事者の間での形式的真実にとどまらず、実体的真実とされています。
そのため、裁判所による訴因・罰条変更命令(同法第312条2項)、職権証拠調べ(同法第298条2項)、裁判長による釈明(同法規則第208条)等が行われます。
そして、同法では、公訴の提起・維持・取消を一方当事者である検察官に委ねています(同法第247条、第248条、第257条)。
起訴状一本主義(「起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない」同法第256条第6項)を採用することにより、捜査機関から裁判所への社会的嫌疑の承継を切断して、裁判所に予断が生じることを防ぎ、もって、真実発見と人権保障を達成しようとしているものとされています。
「家族が逮捕されたが、どうしたらいいか」「示談で済ませたい、処罰を軽くしたい」といった刑事事件に関するご相談を受け付けております。より良い解決方法を目指してサポートいたします。
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