Komoda Law Office News

2022.03.14

ビジネスモデルに関する特許の取得可能性

法律に関するコラムをKOMODA LAW OFFICEの弁護士が執筆します

はじめに

ICT(情報通信技術)を用いるなどして、商品の販売や事業活動の促進等に寄与するビジネスモデル(ビジネス方法)を考案、構築し、事業活動上の成果を挙げている場合、考案者としては、当該ビジネスモデルを同業他社等に模倣、利用されることを防止し、当該ビジネスモデルによって得られるであろう利益の独占を欲することが考えられます。

もっとも、一定のビジネスモデルを考案したとしても、それ自体が特許として認められることは無いとされます。
すなわち、以下、ビジネスモデルの実施に当たり、いかなる条件が整えば、特許取得の可能性があるか、概観します。

特許庁 

1.特許取得の要件

特許法上の特許を取得するには、「発明」(特許法2条1項。「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」。)に該当することを前提として、当該発明につき産業上の利用可能性があること(同法29条1項柱書)、特許出願前に公然となっていないこと(同項各号。新規性)、容易に発明できないこと(同条2項。進歩性)、先に出願されていないこと(同法29条の2。先願性)、公序良俗等に反しないこと(同法32条)を要します。
これらの要件に該当しなければ、特許取得の前提を欠くこととなります。

2.「発明」該当性

(1)ビジネスモデルに関し、最も問題となり得るのは、「発明」に該当するか否か、という点です。
すなわち、ビジネスモデルの考案それ自体が特許の対象となるわけではなく、「ビジネス関連発明」といい得るものでなければならないのです。

(2)特許法2条1項の規定する「発明」とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいいます。
ここで、「自然法則」とは、自然界において一定の原因によって一定の結果をもたらす科学的な法則を意味し、判例上も、自然力を利用した手段を施していない考案は発明に該当しないものとされています(最判昭和28年4月30日)。

また、「特許・実用新案審査基準」(以下、審査基準という)第Ⅱ部第1章1.1によれば、「自然法則を利用」していない創作とは「自然法則以外の法則(例えば、経済法則)、人為的な取決め(例えば、ゲームのルールそれ自体)、数学上の公式、人間の精神活動に当たるとき、あるいはこれらのみを利用している」ものをいうとされています。

そうすると、自然力を利用した科学的な法則によらず、人為的な方法論に止まるようなビジネスモデルは、「発明」には当たらないこととなります。
この点で、一定の営業方法や業務効率化の方法等を構想したとしても、それ自体が特許として認められることは無いものといわざるを得ないです。

(3)もっとも、あるビジネスモデルが、コンピュータ、ネットワークその他の自然法則に基づいて成立した装置を不可分の要素として用いること等により、全体として自然法則を利用しているものといえる場合には、「発明」に該当する余地があります(例えば、コンピュータソフトウェアを用いた商品の売上予測プログラム等)。

それゆえ、特定のビジネスモデルが、単にパーソナルコンピュータ等の機器を用いて情報の検索、入力、出力等を行うことが可能であるというに止まらず、ネットワークからの情報収集やコンピュータを用いた分析、演算処理を不可欠の要素として介在させるものであれば、「発明」に該当する余地があると思われます。

3.その他の主な要件

(1)進歩性
上記「発明」に該当したとしても、公知の技術に基づいて、その分野の一般の専門家(当業者といいます)が容易に発明することができたといえるようなものであれば、特許取得は認められません。
そのため、既存の技術やシステムからは容易には考案できないとか、「発明」を利用した際の効果の面で、既存のものよりも有利であるといった事情が必要となります。

(2)新規性
特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(特許法29条1項2号)は、特許の要件を充たさないところ、考案し、実施しているビジネスモデルが、既にインターネット等で広く公開されており、公開された内容どおりの手法で使用されているものであれば、「公然実施をされ」たものとして、特許の要件を充たさないものと考えられます。

そのため、自ら考案したビジネスモデルを実施するに当たって、特許取得を考えているのであれば、インターネットや書籍等で公開することは控えるのが賢明であると思われます。

4.実例

例えば、とある飲食チェーン店においては、来客の要望に応じて好みの量のステーキを提供することをセールスポイントにしているところ、同店においては、多数の来客の肉の注文量を従業員が混同することを防止するため、個々の来客の注文に応じてカットした肉を計量し、計量した肉のグラム数とテーブル番号が記載されたシールを出力する計量機を導入しています。

各テーブルに番号を付し、札によって区別するとともに、肉の計量とシール出力が可能な計量機を導入して、当該シールを出来上がった料理に配するというシステムにより、個々の来客の注文を従業員が混同するのを防ぎ、業務の円滑化と上記セールスポイントの実現に繋げているわけです。

このようなステーキの販売、提供システムは、ビジネス関連発明と認められ、特許取得に至っています。

 

5.おわりに

以上のとおり、ビジネスモデルを考案し、実施する上で特許取得を企図するのであれば、何らかの「自然法則」を利用した技術的創作である必要がありますが、ICTを不可欠のものとして利用しているような場合も「自然法則」を利用する場合に該当します。

したがって、ICT利用の促進と相まって、それをシステム内に組み込んだ革新的なビジネスモデルを考案すれば、特許を取得し、当該モデルを自社で独占的に利用することも可能となる余地があります。

菰田総合法律事務所では企業法務に関する法律相談も承っております。
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弁護士:久富 達也執 筆
KOMODA LAW OFFICE
弁護士
久富 達也 TATSUYA HISATOMI
座右の銘は「不知為不知。是知也。」(知らざるを知らずと為す。これ知るなり。出展:論語・為政)

 

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