Komoda Law Office News

2019.08.01

任意捜査の原則|弁護士コラム

今回は、刑事訴訟法に規定されている任意捜査の原則について、ご紹介したいと思います。

1 強制処分法定主義

刑事訴訟法(以下「刑訴法」といいます。)197条1項但書は「強制の処分は、この法律に特別の定めがある場合でなければ、これをすることができない。」旨を定めています。これが強制処分法定主義と呼ばれるものです。一方で、同条本文は「捜査については、その目的を達するために必要な取調をすることができる。」と規定しています。

2 任意捜査の原則

強制処分に関する刑訴法197条1項但書と対比し、同項本文の規定(「捜査については、その目的を達するために必要な取調べをすることが出来る。」)は任意捜査の原則を指すものだというのが一般的な理解です(警察官に対する捜査規則である犯罪捜査規範99条は「捜査は、なるべく任意捜査の方法によって行わなければならない。」と、この原則を明示しています。)。

しかし、任意捜査の原則というのは、常に任意捜査が強制捜査に優先する、すなわち、任意捜査で行える場合には、強制捜査を行ってはならないということを意味するものとされているのではありません。

例えば、逮捕・勾留という人身の拘束については、逮捕・勾留しなくても捜査の目的を達することができる場合に逮捕・勾留を認めてはならないのは当然でしょう。

しかしながら、任意捜査ができる場合には強制捜査を行うことが許されないとすると、強制捜査を行う前に相手に逐一捜査を承諾するかどうか確かめなければいけないことになり、これは、不合理です。

また、任意捜査が可能な場合であっても強制捜査によるべき場合もあります。犯罪捜査規範は、住居については、たとえ住居主の承諾があっても任意捜査として捜査を行ってはならない、つまり住居については、必ず強制捜査を行わなければならないと定めています(犯罪捜査規範108条)。
これは、それだけでは、任意捜査の原則に反しているように思えるのですが、この規定は、警察官が相手方にむりやり承諾させて捜査をすることがないように任意捜査を許さないことにしたものです。

3 まとめ

任意捜査と一口に言っても、相手はいかに上手く捜査を行うかということを考えている捜査機関ですので、捜査機関のやり方によっては、完全に任意に応じているとまではいかない場合も考えられます。
そのような場合に協力しない選択も可能であるということを意識することは、ひとつ意義深いものといえるでしょう。

 


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